環境月間だから考えてみる⑦ 沖縄は蜂群数全国一位

第46回新沖縄文学賞受賞作(2020年度)「ばばこの蜂蜜」を拝読しました。そのブックレビューと、本をきっかけに知った沖縄の養蜂事情について書きました。

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第46回新沖縄文学賞受賞作「ばばこの蜂蜜」

ばばこの蜜蜂 (タイムス文芸叢書012) 新書 – 2021/2/2 なかみや梁(著)沖縄タイムス社(出版社)

温かいお話でした。登場人物が皆優しい。サヴァン症候群で15歳の太一と、彼に手伝ってもらいながら養蜂業を営むウシ婆さんが主人公。養蜂をウシ婆さんに勧めた近所に住むユーリキヤー(秀才)の徳次や、太一が利用する福祉施設の支援員の貴子などに支えられ、太一やウシ婆さんは日々を送っていますが、ある日、太一の突拍子もないような行動が皆を驚かせます。それによって明らかになっていく太一の特殊能力がさらに皆を驚かせ…
物語後半、ウシ婆さんは台風により発生した土砂災害で自身と蜂に被害を被りますが、太一と助け合いながらそういった困難を乗り越え、最終的に「沖縄のポリネーション(花粉交配)用の養蜂が全国1位になる」という夢を叶えます。
太一は両親を知りませんが、太一の母を想う心にしんみりとします。
なお「ばばこ」とは、太一によるウシ婆さんの呼び名です。
著者のなかみやさんの経験があとがきに書かれていましたが、ご自身の苦労が血肉となって昇華されたような明るく温かい作品だと思いました。

養蜂を巡る情勢(農林水産省ウェブサイト)

沖縄の養蜂について知る良いきっかけになりました。

農林水産省ウェブサイトに「養蜂をめぐる情勢」という資料があります。

そこに蜜蜂の飼育動向のページがありますが、沖縄は「蜂群数」で全国1位となっていました。なお蜜蜂飼育戸数等の1位は長野県です。また長野県は蜂群数では2位でした(R3年1月1日現在)。

飼育戸数: 長野⇒静岡⇒鹿児島
蜂群数: 沖縄⇒ 長野⇒熊本

限られた蜜源を蜂群たちが奪い合わないようにするために、蜂群数が増えすぎると配置調整が必要になってくるそうで、沖縄県のウェブサイトで配置調整の協力依頼についてリーフレットが出ていました。蜜源植物の植栽状況に応じた蜂群の配置調整が必要だそうです。趣味で養蜂をやっていても届出が必要となっているのは、地域の蜂群の数を管理する必要があるからなのですね。

蜂がたくさんいる街というのは花々や植物に恵まれた自然あふれる街というイメージがありますが、蜂群が増えすぎることにも問題があるとは…。

蜂蜜生産量は?

なお蜂蜜生産量については北海道が全国1位となっています。日本の蜂蜜の自給率は約6%だそうです。

蜂蜜生産量の上位10県(令和2年) (単位:トン)

1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
北海道 長野 秋田 熊本 青森 和歌山 愛知 福岡 岐阜 静岡
419.0 294.2 242.7 222.0 155.0 125.1 125.0 107.1 103.0 92.5

農林水産省ウェブサイト養蜂をめぐる情勢(令和3年10月)」を元に作成)

作品に出てくる花粉交配(ポリネーション)用の蜜蜂についてですが、蜂蜜及び蜜蜂産品の国内生産額は推定約80億円となっており、このうち花粉交配用蜜蜂は約20億円と約25%を占めるそうです。

国内で不足した場合は県境をまたぐ需給調整も必要となるらしいです。蜜蜂産業にこのような分野があるということを初めて知りました。

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