環境月間だから考えてみる⑤ 【ブックレビュー】DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法

「DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法」 山と渓谷社 (2020/12/19) ポール・ホーケン (著) 江守 正多 (翻訳) 東出 顕子 (翻訳)

まず「DRAWNDOWN(ドローダウン)」とは、減少、消耗、枯渇、水位低下などという意味を持ちます。本書においては、温室効果ガスがピークに達して、年々減少しはじめる時点のことをいいます。二酸化炭素の排出を阻止する、遅らせる、対処する、それだけでは不十分であり、人類にとって意味のある唯一の目標は「地球温暖化を逆転させること」と提示しています。

そのドローダウンのための解決策となる100通りの方法が、具体的数字やなるべく平易な言葉を使って説明されています。ポール・ホーケン氏が牽引している190人の研究者、専門家、科学者の集まる国際的なグループ(ドローダウンプロジェクト)により、地球の未来を明るくするための具体的な100の解決策が集められた本書。分厚くて手の込んだ作りになっています。

これらの解決策は、費用対効果はどれくらいか、どれくらい速やかに実行できるか、社会にとってどれくらい有益かなどの尺度によってランク付けされています。また、彼らの推定する2050年までのCO2削減量(ギガトン)、正味コスト、正味節減額が示されています。

100通りの解決策は、大きく以下のように分類されています。

  • エネルギー
  • 女性と女児
  • 建物と都市
  • 土地利用
  • 輸送
  • 資材
  • 今後注目の解決策

風力発電などの再生可能エネルギーから、フードロスの削減、女児の教育機会、電気自動車やライドシェア、家庭での節水、森林保護、産業廃棄物のリサイクルなど提示される解決策があらゆる分野に渡り、SDGsとも親和性が高いと言えます。地球温暖化を食い止めるための手段として女児の教育機会を挙げている点は注目すべきで、ランキングは6位となっています。

「今後注目の解決策」では、一般人が聞いたことのないようなものや、地球温暖化に関する解決策として取り上げられる印象のない20通りの方法が紹介されています。これからの環境ビジネスに興味のある人は必見です。

分厚い本ですので、一気に通読するよりは辞典のように使い、今最も気になっているトピックを探して読み込む作業を繰り返し、全貌を理解することが良いと思いました。

1ギガトンとはどれくらいの量か

本書の中で、1ギガトンはオリンピックプール40万個分という表現がありました。36ギガトン(オリンピックプール1440万個分)が、2016年に排出された二酸化炭素の量だそうです。

例えば、ランキング8位の「ソーラーファーム」は、このまま増加し続ければ2050年までに36.9ギガトンの二酸化炭素排出が回避されると示されています。

1年間の二酸化炭素排出量を、一つの解決策によって30年かけて回避する…。なるほど、以前よりも可視化できたような気がします。100通りの解決策、どの国がどれに力を入れて取り組んでいるのか、日本ではどうなのか、「気候危機」を考えるための物差しが一つ増えました。

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