
【ブックレビュー】「陳澄波を探して 消された台湾画家の謎」 柯宗明 著、栖来 ひかり 訳(岩波書店、2024年)
2.28事件に巻き込まれるしかなかった一人の台湾画家、陳澄波(ちん・とうは 1895-1947)。実在した人物の痕跡や生き様を、フィクションの人物が探偵役となって追いかける本作は、エンタメ性を交えつつも、台湾の人々が日本統治時代から光復(日本からの解放)後の中国統治下において虐げられてきた歴史の実相に迫り、声をあげられなかった市井の人々が胸の奥にしまい込むことしかできなかった思いを紐解く。