世界史を学び直したい②【ブックレビュー】20の古典で読み解く世界史(2021/8/19) 本村 凌二 (著)

世界史を学び直したい欲が急速に高まっており、この書籍を手に取りました。

「20の古典で読み解く世界史」(2021/8/19) 本村 凌二 (著)

古代ローマ史を専門とする東京大学名誉教授である著者が、20の名作古典を本の書かれた歴史的背景を踏まえながら紹介しています。

紹介されている20の名著はどれ?

紹介されている古典は以下の20作品で、古い順から紹介されていますので、最初から順番に読んでいく方が世界史の流れが頭に入りやすくなると思います。つい気になる作品のページから読んでしまいそうになりますが…

  1. イリアス/オデュッセイア(ホメロス/紀元前8世紀?/イオニア)
  2. 史記列伝(司馬遷/前145?-86?/中国)
  3. 英雄伝(プルタルコス/46?-120?/古代ギリシア)
  4. 三国志演義(羅貫中/中国)
  5. 神曲(ダンテ/1265-1321/イタリア)
  6. デカメロン(ボッカッチョ/1313-1375イタリア)
  7. ドン・キホーテ(セルバンテス/1547-1616/スペイン)
  8. アラビアンナイト(作者不詳)
  9. ハムレット(シェイクスピア/1564-1616/イギリス)
  10. ロビンソン・クルーソー(デフォー/1660-1731/イギリス)
  11. ファウスト(ゲーテ/1749-1832/ドイツ)
  12. ゴリオ爺さん(バルザック/1799-1850/フランス)
  13. 大いなる遺産(ディケンズ/1812-1870/イギリス)
  14. 戦争と平和(トルストイ/1828-1910/ロシア)
  15. カラマーゾフの兄弟(ドフトエフスキー/1821-1881/ロシア)
  16. 夜明け前(島崎藤村/1872-1943/日本)
  17. 山猫(ランペデューサ/1896-1957/イタリア)
  18. 阿Q正伝(魯迅/1881-1936/中国)
  19. 武器よさらば(ヘミングウェイ/1899-1961/アメリカ)
  20. ペスト(カミュ/1913-1960/フランス)

全部聞いたことある~!!でも実際に手に取って読んだものはというと…

三国志やロビンソンクルーソー、アラビアンナイトあたりは、小学生向けのものを手に取った記憶はありますがオリジナルは手に取ったことがありません。ハムレットも有名過ぎるので内容は知っていますが、本で読んだことはありません。

古典を読みたいが尻込みしている人への羅針盤

作品それぞれのあらすじ、書かれた歴史的背景、作者紹介、著者の歴史家の視点からの解説などがまとめられており、この1冊から深い教養が得られます。

それぞれの作品の概要を知った気にはなりますが、作品の面白味であり肝となる部分は案外「読んでからのお楽しみ」として伏せられているので「自分で読んでみよう!」という気になります。あくまで著者の「趣味の本」として位置づけられているので、これを入門書的に捉え、実際に古典を読んでみるのが良いと思います。

古典は読みたいが尻込みしている、世界中に名作が沢山ありすぎるので選べない…そんな人への羅針盤となる本だと思います。

作品のつながりを発見

時系列で紹介しているだけでなく、この作品はこの作品を目指したかったのではないか?など、作品同士のつながりについても提示してくれている部分があるので、それも20冊をひとつながりで頭に入れるための一助になります。(私自身はどの作品も未読なので、とても参考になりました。)

例えば、「ファウスト」に出てくる絶世の美女ヘレナは「イリアス」に登場していること、「神曲」を意識していた「デカメロン」、近代の「イリアス」というのに相応しい「戦争と平和」、「カラマーゾフの兄弟」の続編では「戦争と平和」的な書き方をしたかったのではないか…

など別項と絡めたような解説が散りばめられており、各項で得た知識がブツ切りにならずに済みました。

また古代ローマの専門家から見る、中国文学で扱われる人命の軽さや刑罰の重さについての解釈も面白かったです。

二分心って何?

「イリアス/オデュッセイア」の項で出てきた二分心の話が興味深かったです。3000年以上前の人には神々の声が実際に聞こえていたと説明するのが二分心(心の中に自分と神が共存していること)で、「イリアス」では人々は神の声が内面から聞こえていたが、「オデュッセイア」ではそれが出来なくなってきたことを表現しているのでは?というような解説がありました。神の声が聞こえる/聞こえないというのが、人類の脳みその発達に深く関わっているという説明は興味深く、二分心についてもっと調べてみたいと思っているところです。

20冊目の「ペスト」が不条理文学と言われ20世紀型なのに対し、神々の声が聞こえて文字がまだ無く観客に声で詩を届けていた時代の「イリアス」を比べると、文学の発展の過程を見る面白さを感じます。

このように、解説の中で興味を惹きつけられるエピソードが満載です。

文傑が命懸けで残した作品

「イリアス」から「ペスト」まで古今東西から集められた20冊。文傑たちが命懸けで書き残し、淘汰されずに今日まで生き残ってきた古典。どれから読もうかしら。

コメント

タイトルとURLをコピーしました