「学生主導型のミュージカル制作の授業 in 琉球大学」
20年以上の歴史がある科目で学部問わず誰でも参加することができる「琉大ミュージカル」は、毎年商業化されたミュージカルから演目を選び、4ヵ月という短い期間で仕上げて上演します。
2022年度の演目はかつてトムハンクスが映画で主演した作品がミュージカル化された「big The Musical」で、2023年2月12日に宜野湾市民開館大ホールで上演されました。
オーケストラ、キャスト、スタッフ、そして制作部の総勢70名が一つの目標に向かって、学業・バイト・その他諸々と両立しながらやり抜きました。
観てきましたが、涙ぼろぼろ。
コロナ禍で20年と22年には上演ができず、21年も稽古ができない期間があり、担当教官である琉球大学名誉教授の服部先生が琉大をご退職されたことも相まって、人気科目としての勢いは減退。琉大ミュージカルの生命線である制作部がなかなか集まらないなどの苦境に立たされている中で、OBOGからは「本当に大ホールでやるのか」と問われ続け、それでも「観て良かった」「感動した」「面白かった」「ダンスすごかった」とお客様に言わせる舞台に仕上げました。拍手・・・!
前置きは長くなりましたが、せっかく観てきたので感想を書いていきます!
琉大ミュージカル2022「big The Musical」の感想
まず今回のフライヤーに載っていたあらすじ。
あらすじ
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12歳の少年ジョシュは、ある日カーニバルで願いを叶える魔法のマシーン「ゾルター」に出会い『大きくなりたい!』と願う。すると翌朝、彼の体は大人の姿になっていた!不審者と間違われて家を追い出されたジョシュは、ひょんな事からおもちゃ会社で働くことに。なんと彼は子どもの発想を活かして大活躍!そこで才色兼備のキャリアウーマン、スーザンと出会い、大人の世界に魅了されていく。一方、突然姿を消した息子を思い、悲嘆にくれる母。ジョッシュを 子どもに戻そうと奔走する親友、ビリー。さあ、ジョシュは大人と子ども、どちらの世界を選ぶ…?
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老若男女問わず楽しめそうなストーリーの予感・・・。実際そうでしたが、思っていたよりはアダルティーな要素がありました。少年の心を持つジョシュとの出会いを通して、33歳のスーザン始めおもちゃメーカーの大人たちが子どもの心を思い出す様子が描かれているので、どちらかと言うと子どもの心を忘れて生活を送っている大人たちに贈る物語かもしれません。
効率、コスパ、実用的、建前、世間体、それらのものが無意識に体に刷り込まれ、あっという間に1日が終わるような毎日を送っている大人が、はたと立ち止まり、子どもの頃はそういえばあんなことが好きだったな…、初恋のあの子元気かな…とか振り返ることのできるストーリーです。
お気に入り
マイフェイバリットな点を挙げます。
- 大人のジョシュ(中身は13歳の少年)の拙い歌唱力が良い。もし音外しが計算づくしなのだとしたらすごい。歌唱力のあるスーザンとのギャップにより、それだけで子どもと大人の違いが表現されているように受け取れた。一生懸命だけど上手ではないという塩梅がかわいい。
- 大人のジョシュ(男声)と子どものジョシュ(女声)がデュエットするところ。これは、実はミュージカルでもあまり類を見ないシチュエーションではないか。外見は大人、中身は少年、そんなジョシュが初めて本当の恋に落ちる・・・。シアターソングとして最高に素敵。
- オーケストラ!1曲1曲がとても良い。これに関しては演奏が素晴らしかったことと、曲そのものが面白いことの両方が理由である。金管楽器の賑やかさ・煽り感(トランペット4本!)、木管楽器の優しさ・キラメキ、そしてピアノ・ベース・ドラムの作品を支える力。踊る指揮者がまとめ上げていた。音楽の力で物語を引っ張り世界を創り上げるミュージカルという芸術が大好きです。(手拍子が起こっているナンバーがあったが裏打ちで良かった!裏打ちが合う)
- 客出しの曲がクオリティ高くて癒しだった。ほとんどのお客さんは席を立たずに観ていた。作品の余韻はどこへやらだったぞ。でも今はちゃんとCross the Lineが脳内流れてる。
- 転換曲ひとつ取っても素晴らしくクリエイティブな作りで、あぁすごい。
- ジョシュの母が「同じ毎日の繰り返しー」と嘆きつつ、「不審者が家に!?」の場面で子ども達を守ろうとするシーンは、同じ2児の母としてモロ感情移入。
- ジョシュの壮大なジャーニーだが、それを通してジョシュ母の心がいかに変化したかも要注目。「私へのメッセージだわ」くらいに思えるものを鑑賞作品に見出せることが出来たらラッキーだが、今回はジョシュ母の心の動きがそうだったと思う。ラッキー。私も子ども達が自分の意志で行動するようになってきたことが喜ばしい反面、ちょっと寂しくもあり、いつまでも赤ちゃんのままでいてほしいと思うこともそりゃあたまにはある。目の前の子どもと向き合うのって難しいんだよね。そしてジョシュの母が、ジョシュの親友ビリーに「あんまり早く大人にならないでね」という台詞にしみじみしてしまった。ジョシュがママを思って「お家に帰りたい」と歌い上げるシーンも、うちの息子がこれを歌ってたら…と置き換えてしまったし。母親目線的には、スーザンとのイチャイチャなんて「どこの馬の骨」事件であり、早いとこゾルター探しなさい!と思ったものである。
- とは言えスーザンの歌いあげるナンバーにも共感。キャリアを積み上げていく中で一生懸命身に付けてきた「殻」を外してくれたジョシュを、大好きになる気持ちはよくわかる。ジョシュが見せてくれたプラネタリウムの星空、無邪気にくれたリング、大切な宝物だよね。
- ダンスシーンはどれも楽しかったけど、おもちゃメーカーの社員たちがカップ持ってノリノリで踊るシーンが楽しかった。やんちゃでファンキーな気持ちを思い出す瞬間って最高だよね。そしてそれって案外、気持ちの持ちようかもね!
- もちろん一幕最後の「Cross the Line」は見せ場だった。ダンスシーンで音楽もノリノリなのに、泣けた。大学生の火事場の馬鹿力ってホントすごいよなぁ、知ってたけど!と感極まってしまったのもデカイ。半年前の琉大祭(受講生勧誘のため)でこの曲をアトラクションで出してたんですよ。
- 大道具ひとつひとつに魂がこもっており、作品世界を創り上げていた。一人じゃ創り上げられない舞台、みんなで創り上げる舞台。
琉大ミュージカル卒業生の一人だが
私自身は琉大ミュージカルOBOGの一人なので、自分の時代と重ね合わせて舞台を観るとさらに泣けます。未熟すぎて思い出す度ビタースイート(笑) あの頃と全然変わってないような気もするけど実際はいくつも段階を重ねてて、良くも悪くも大人になっている。ジョシュが、スーザンを好きになったことで心も大人になりかける過程を経て、親友の声で目を覚まし自分自身にきちんと向き合うことを誓い、再び本物の自分に戻っていくことと、自分自身が琉大ミュージカルを卒業してから社会人になり、夫を持ち、母になったことで身に付けてきたものを舞台観てる瞬間だけでもいったんはずす、それらがシンクロしていたことも泣ける要素のひとつだったと思います。
個人的にはミュージカル作品は「泣くため」に観にいく。3時間の大作なのだから作品を通して自分の感情も吐き出したい。それが十分にできて良かった。
社会人アイデンティティをまとった自分が「琉大ミュージカル」を観るのって、とんでもなく「エモい」のである。他の卒業生も同じように感じる部分があるのではないかと思っている。
完全に主観的なブログでしたが、観てきたその日に…と思い、いったん吐き出しました。
「ねぇママ早く大人になりたい」
ちなみに観劇後、家に帰るとなぜか娘が「早く大人になりたい!どうしてなれないの?」という話をしてきた。え?どうして?めちゃタイムリー!私が舞台の話をしたから?
私「どうして大人になりたいの?」
娘「えーだって、難しい本も読めるから」
私「あんまり早く大人にならないでね」(観てきたその日にこの台詞言う!?)
娘「えー?」(と言いつつ再びお人形で楽しく遊び始める)
ゾルター現れたらどうしよう。
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