「ハブにまつわる説話」という章では、奄美群島・沖縄諸島で語り継がれてきたハブにまつわる伝説や民話がたくさん紹介されていて、1万年以上もハブと共に暮らしてきた奄美や沖縄の人々がいかにハブを恐がっていたか、神聖化していたか、あるいは呪いと捉えていたか、身近に感じていたかということが分かります。ここから膨らませたいと思った説話がたくさんありました。
それ以上に、ハブが大切な生態系の一部であるという考えを得ることができ、それが本書を読んだ一番の収穫でした。
- ハブの生態系(分類、分布、生態、毒性など)
- ハブの歴史(起源、ハブ対策とマングース、人間への被害など)
- ハブの飼育方法
- ハブにまつわる説話(文化)
- 国外のハブ etc
ハブ好きならずとも興味深く読めるような「ハブ辞典」のような1冊です。
幼い頃に「ハブ対マングース」の決闘ショーが水泳競争に変わったことをよく覚えています。今にして思えば、筆者の言う通りハブとマングースを無理に決闘させて見世物にする行為は決して教育的に良いものではなく、文化ではなく負の遺産であるという見解に共感しました。ハブはそもそも人間を食うために猛毒を持っているわけではないのに、人間に勝手に恐れられている。そしてマングースはそもそも人間の勝手な解釈で外国から連れてこられた存在で、ハブを食べたがらない。この両者が人間の娯楽のために殺し合いをさせられていたのですね。
ハブは生態系の中でどのような役割を果たしているのか、沖縄の歴史の中でどのように語り継がれてきたのか、咬傷被害のことやハブと出会わないための対策などと合わせて、そのようなことにもフォーカスして子ども達に伝えていくべきだと思いました。
ハブの個体数は減少し続けているといい、それが奄美群島・沖縄諸島の環境に影響を与えていくと筆者は警鐘を鳴らしています。
たまたま同じ時期に読んだ絵本がこちらです。
人間に恐れられているオオカミが、いかに生態系の保持に重要な役目を果たしているかがよくわかる絵本になっています。
オオカミと言えば、童話では悪者としてお馴染みです。3匹の子ブタ、狼と七ひきの子ヤギ、赤ずきんなど…。4歳の娘もこの絵本の表紙を見て「恐い絵本?」と聞いてきました。
人間のせいでオオカミがいなくなり生態系が崩れた米国立公園イエローストーンに、再びオオカミを放ち、環境を再生させたプロジェクトについての絵本です。オオカミが姿を消したことで、オオカミが捕食していたエルクが増え、増え過ぎたエルクが草や木を食べ尽くしてしまい、草木に住んでいた鳥がいなくなり、クマ、キツネ、その他の動物も減ってしまい・・・そんな環境がオオカミが帰ってきたことにより再生したのでした。
食物連鎖のトップにいる動物が、いかに生態系を守るために重要な役割を果たすかが分かります。
ハブもオオカミも、人間にとって恐い存在であると同時に、自然について教えてくれる重要な生き物でもあると思います。子ども達には、これらの生き物のそういった重要な側面についても教えていくことが出来ればいいなぁと思っています。
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