沖縄に住んでいる者として、2019年中に起こった大きな出来事のひとつは「首里城火災」です。
10月31日に発生してから2ヶ月が経ちました。
まさに寝耳に水だった「首里城火災」のニュース。私自身も喪失感に苛まれましたが、2ヶ月経った今では前向きにこのトピックに向き合えるようになってきました。
県民全体で心ひとつに「復元」を望んでいて、悲しみや希望を共有しているという実感があるからだと思います。
沖縄県の考える「7つの柱」
沖縄県でも知事直轄の「首里城復興戦略チーム」を設置するなど、対策に向けての取り組みが進められていますが、どのような方針で復興が進められていくのでしょうか。
年度内には、有識者会議等を経て首里城再建に向けた基本的方針をまとめることになっているそうで、12月26日に記者会見でその「7つの柱」が発表されました。
- 首里城の早期復元と段階的公開
- 火災の原因究明、防火・管理体制の強化
- 文化財等の復元、収集
- 伝統技術の活用と継承
- 琉球文化のルネサンス(復活)
- 世界遺産としての首里城を中心とした歴史的環境の創出
- 歴史の継承と資産としての活用
注目したい点は「段階的公開」と「琉球文化のルネサンス」
段階的公開
12月14日から拡大された首里城公園の利用可能区域は、すでに火災前の約8割程に及んでいるそうです。
実際に見てきましたが、正殿や御庭のある奉神門から向こうの有料区域に入れないだけで、首里城公園の良さは十分に堪能できると感じました。子どもとの散歩にも良いと思ったので、これからもたまに足を運びたいです。
城壁の美しい曲線や、「西のアザナ」等からの見晴らしは格別でした。守礼門や歓会門など、奉神門に辿り着くまでに見られる様々な門も全て見所になります。御庭の外から中を覗くと崩れた南殿などが見え悲しくなりましたが、ここから復元の過程を見つめ続けていきたいと決意のような気持ちを覚えました。
世界遺産の遺構や、日本軍の地下壕を公開してほしいという声が挙がっていますが、もし公開が実現すれば是非見に行きたいです。
プロジェクションマッピングで焼失した建物を再現してはどうかというアイディアも出てきているようですので、どのような形で公開が進んでいくのか楽しみにしていようと思います。
琉球文化のルネサンス
沖縄県の方針として「琉球文化のルネサンス」が強調されており、これまで県と那覇市に集まった12億円以上の寄付金はソフト面にも活用する考えのようです。
武器を持たずに隣国との中継貿易や文化的交流を通して発展してきた、小さいながらも誇り高く、礼を重んじ祖先を尊ぶ琉球王国。
組踊や琉球舞踊などの琉球独自の文化はもちろん、琉球史や琉球王国がアジアの中でどのような存在だったかなどの学びの場が増えるのはとても良いことだと思います。それが、琉球文化への注目度を高め、「琉球文化」を守り育て次世代に継承することにつながり、ひいては世界平和の一助になれば素晴らしいと思います。
寄付金の使いみちについて
なお、寄付金の使い道について、県はアンケートで一般県民にも広く意見を募り条例を制定する方針のようです。
寄付金は全てハード面の復元にあてられると多くの人が予想していたと思いますが、どのような使い道が採択されていくのでしょうか。今後発表される県の基本的方針がどのようなものか、注視していきたいものです。
いずれにせよ、県民の声が広く反映された条例が制定され、県民全体で「首里城再興」を考え実現していけることを願います。
首里城再建寄付金の使い道をアンケートへ 沖縄県が方針、意見踏まえて条例化(琉球新報HP 2019/12/31)
みんなで考える「首里城再興」
国営の首里城公園。建造物そのものの復元は政府主導で行われていく動きなのかもしれません。
しかし、ソフト面の復元も合わせて行われるということになると一般県民の参加が必要不可欠です。首里城のことをよく知らなかった人もこの機会に学び直しをしたり、「こんなふうに再興されたらいいな」というアイディアを共有したりすることには意義があると思います。
「首里城再興」が、国主導か県主導かにとらわれず「みんな」が主体的に意見を述べられるものとなり、一般県民参加型の面白いものになることを願います。
報道写真集
「沖縄タイムス」「琉球新報」のそれぞれから報道写真集が出版されています。両方とも、利益は首里城再建の寄付にあてられるとのことです。
暗闇の中で燃え上がる首里城の写真をこれ以上目にしたくない方もいると思いますが、焼失前の姿や首里城の概要や歴史などもわかりやすくまとめられていて、再建への意識をより高揚させる内容になっていると思います。
「報道写真集 首里城」 2019年11月発行
「甦れ!首里城 報道写真と記事でたどる歴史(号外・別刷り特集付)」2019年12月発行